呼吸見守りセンサー「IBUKI」の開発に至るまで

本開発プロジェクトの歴史は長く、古くは1990年ごろまで遡ります。

元々、SONYで1989年に開設された脈診研究所(その後、生命情報研究所と改名)が、生体信号を電子技術で検出し、これに東洋医学の知見を加えた製品の研究開発から始まりました。

2000年代に入り生命情報研究所は解散になってしまいましたが、ソニー創業者井深大の頭文字(MI)を冠してエム・アイ・ラボが設立され、高島が社長となり、電子技術による生体情報検知の研究を続けていきました。

2002年に本製品の基礎技術となった生体センサー技術を、エム・アイ・ラボと岩手大学の共著論文「空気動圧センサーによる臥床時の呼吸・心拍・体動情報の計測」を電気学会論文誌Bで発表しました。当初は、下記の睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)に役立つ、体に非接触のVitalセンサー開発を目指していました。

 

参考資料【睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度分類】出典:Nikkei Style

その後、縁あって当社が2013年に本研究を継続することになり、その第1弾が、2017年2月に発表したiPhone対応呼吸センサー「トロイメライ」(定価48万円)で、施設や研究機関向けに実験用として発売しました。

開発苦労談(株式会社エム・アイ・ラボ 高島社長)

当初、Vitalセンサーの開発では、正確な呼吸運動の検出に苦労しました。ヒトの呼吸には腹式、胸式の二種類がありエアパッドの設置位置で呼吸波形が異なります。

今回は、リキッド・デザイン社で呼吸検出に開発を絞り込み、エアパッドの位置を最適に選び、呼吸検出の精度を高めました。また、同様に乳幼児の検出も可能になりました。今回20数年越しに製品化となり、過去の苦労が報われて感慨深いです。

>>トロイメライ動作動画はコチラ

現在、「トロイメライ」製品の量産版が専業メーカーにより介護施設向けに開発中であり、年内に業務用として発売される予定です。(参考:神奈川新聞
今回のプロジェクトは、介護施設向けの「トロイメライ」の仕様を一部変更して、高齢者のみならず、乳幼児でも睡眠中の呼吸変化をモニターおよびiPhoneヘルスケアアプリに記録できるようにしました。
特に睡眠中の低呼吸や無呼吸の不安、乳幼児のうつぶせ寝による事故の不安を軽減できるように本体にアラート機能を追加して、スマートフォンを使える方なら無理なく設定できるように簡易性も改善しました。

呼吸見守りセンサー「IBUKI」開発の動機

NHKでニュースやドキュメンタリーで幾度となく紹介された1人暮らし高齢者の「孤独死」乳幼児突然死症候群(SIDS)の事故。

いずれも発見が早ければ助かる可能性があったと思います。
1人暮らし高齢者の見守りは、町会・自治会、民生委員など地域のボランティアの方々が尽力して行われていますし、保育園における乳幼児の見守りは「少なくとも0歳児は5分に1回、1歳児は10分に1回」という指針があります。

厚生労働省発表の「不慮の事故の種類別にみた年齢別死亡数」では、0歳児の実に84%は窒息による死亡事故という結果が出ています。

窒息は一旦起こると5~6分で死亡してしまうこともあり、重大な結果(重症化や死亡)を招く可能性のある非常に怖い事故です。

話しは変わりますが、睡眠センサーは、国の平成25年度ものづくり補助金で採択され、クラウドを利用したIoT高齢者見守りシステムとして開発をスタートさせました。開発当初のコンセプトは、睡眠中の高齢者の見守り用で、介護士さんの夜間勤務の負担を減らし、事故を未然に防ぐことが目的でした。その後、この技術が新聞やネットに取り上げ始められてから、乳幼児、ペットなどへの利用の問い合わせが来始めました。

動物実験は1度行っており、子豚の睡眠中のVital信号(呼吸振動、心拍振動)を検知出来ていましたが、乳幼児は未確認でした。偶然、従業員の0歳時のお子さんで実証テストができる機会があったため、簡易的に行ったところ、予想に反して定量的に呼吸振動を検知できました。

当初、赤ちゃんはレム睡眠が多く、睡眠中もよく動いているため、呼吸数をモニターするのは困難であろうと考えていました。

しかし、介護用の「トロイメライ」で実験したところ、数値の乱れはあるものの、平均呼吸数、体動検知、呼吸変化をある程度確認できれば、うつぶせ寝による呼吸低下をモニターすることは可能だろうという結論に達しました。その結果、成人の睡眠センサーとしてだけではなく、家庭や保育園における乳幼児の見守り用にも使える睡眠センサー開発としてIBUKIプロジェクトと名付けスタートさせました。